淵野辺から世界へ!

20代。140字以上。

過去の誰かと僕の日常

アリゾナでの留学生活を終え、インターンのためにカリフォルニアに来ている。仕事が始まるまでに3週間ほどサンフランシスコでいとまを与えられたので、サイクリングしたり、買物したり、お散歩したり、ただ楽しいだけの毎日を過ごしている。アパートを借りているコールバレーという街は治安も良く、とても居心地が良い。

 

 

昨日はカストロ地区というゲイの街に行ってきた。

5月の平日の昼。観光客がほとんど居ない時季時間のせいか、素のカストロを見れた気がする。街中にのぼるレインボウの旗や、ブティックとブティックの間に普通に登場するアダルト用品店、そのショウウィンドウを前にキャッキャウフフしつつアナルビーズについて語るカップル、立ち寄ったスタバではジャックスパロウみたいな店員が客とハグしながら宙に浮いて回ってた。今まで生きてきた世界と違いすぎて訳がわからないのに、ああこういうのもあるんだと妙に腑に落ちてしまった。

 

 

このカストロ地区にはかつて、ハーヴィー・ミルクという政治家がいた。史上初のゲイを公言しながら公職者に選ばれた人で、カストロ地区の市長とも呼ばれた人。同性愛者の権利のために戦った人。

昨日5月22日はこの人の生まれた日で、ハーヴィー・ミルク・デイという彼を称える日だった。街中に彼のポスターが貼られ、映画館ではハーヴィーの伝記映画『ミルク』がやっていた。彼の記念日にここに居合わせたこと、あと2分で上映が始まるというアナウンスが聞こえたこと、この後の予定がなかったこと、そんな偶然が重なって、チケットを買った。

 

『ミルク』を観ながら、カストロ地区の今日の繁栄に思いを馳せていた。ゲイコミュニティには解決しなければいけない問題がまだ多いが、ハーヴィーが戦っていたときからしたらとんでもない進歩だろう。ガス・ヴァン・サント監督がカミングアウトできたのも、もしかしたらハーヴィーのおかげかもしれない。

 

 

2008年、オバマ大統領が当選したときに黒人の10代のシングルマザーがインタビューの中でこう語った。

ローザ・パークスが頑なに座り続けたから、マーティン・ルーサー・キングが行進でき、マーティンが行進したからオバマが立候補できた。今度はオバマが大統領になったんだから、私たちの子どもたちはきっと空だって飛べるわ!』("Rosa sat so Martin could walk; Martin walked so Obama could run; Obama is running so our children can fly!")

バスで白人に席を譲らなければいけないということに抵抗したローザ・パークス、平和の行進を実現したマーティン・ルーサー・キング・ジュニア、そして大統領になったバラク・オバマ。虐げられてきた黒人が権利を得ていく過程を見事に表現した一文だ。

 

 

過去に誰かが動いたから、僕の日常がある。日常を形作る全てのもの、あらゆる文化風習は過去の誰かの行動の結果。

 

そんな当たり前のことを改めて思った一日。自分は未来に何を残そうか。